画家の生活16
人との出会いが僕を作る
人生や感性、生き方を変えていくのは人との出会いだ。
そう思っている。
良い友達ができると良い影響を受ける。
人は人との出会いで良くも悪くもなる。
強烈な個性を持った友人に出会えば当然触発される。
作家の僕はそれが作品となって現れる。
昔も今も僕には不思議と面白いライフスタイルを持って生きている人との出会いが多い。
オーストラリアの話が続いているので
もう一つオーストラリアに行った時の話。
ブリスベンに住んでいるピーターの家に遊びにいった。
ピーターのライフスタイルは興味深かった。
1~2年仕事をしてお金を貯めると海外に一年程旅に出て、お金がなくなると返って来てまた1~2年働いてどこかに旅に出る。そんな生活を繰り返していた。
小学校の先生→旅→牧師→旅→幼稚園の先生→旅。こんな感じだ。
聞けばオーストラリア人にとってピーターの様な生活は普通らしい。
オーストラリアには退職金制度が無いので一生その会社に在籍する方が珍しいらしい。
日本人はどうしてそんなに働くんだ?何のために働くんだ?
真顔で聞いてくる。とっても不思議らしい。
僕たちは普通だと思っていたが、ちょっと言葉に詰まった。
彼らは人生を楽しむために働いているのだそうだ。
日本人はどうしてそんなに働くんだ?何のために働くんだ?
あぁつまり、、、食べていくためで、、、老後のためで、、、退職金もらって老後を、、、
考えていてシュンとなっていく。。。
日本も退職金制度が無かったらそんなライフスタイルが当たり前になるのだろうか。
ちょっと考えさせられる。
ピーターにはティムという弟がいた。
クロコダイルダンディーという映画を見た事はあるだろうか。
彼もブッシュの中を観光客を連れてキャンプをしたりするガイドをしているらしい。
ティムはクロコダイルダンディーそのままだ。
身長は百九十cm以上、スキンヘッドで眉毛も剃っていて無く、耳には沢山のピアス。
使い込んだ革ジャンに皮のパンツ。
見た目は映画のマッドマックスに出て来るワルそのものだ。
「弟のティムだよ」ピーターが僕達に紹介する。
僕らはビビった。
ティムはピーターの家から内陸部に五百キロ入ったブッシュの中で暮らしているそうで、日本人の友達が来ると聞いて遊びに来たそうだ。
ナナハンの大型バイクに大型犬を2匹、後ろにおんぶの様にして1匹乗せ、1匹を後ろ向きでハンドルに座らせて抱きつかせ500キロをノンストップで来たそうだ。
ティムも凄いが犬も凄い。
フリークライミングが好きなそうで、みんなでビールを飲んでいる間小さなメモ帳に山登りのへたくそな絵をずっと描いていた。
怖そうだが意外と面白そうな奴だ。
「明日公園に移動遊園地とサーカスが来るんだけど行かない?」
ピーターが誘うので僕らは行くと即答した。
オーストラリアのあちこちを回っている移動遊園地とサーカスなんて興味津々だった。映画みたい~♪
ピーターがティムに「ティムも行く?」と聞く。
行くタイプじゃないだろ~。みんな思ったが、
「行く」と即答。行くのかよ~。
サーカスに向かう途中僕らが歩道を歩いていると彼だけは歩道脇に生えている大きな木に飛び移って逆上がりしたり、となりの木にサルの様に飛び移って移動していた。道を全く歩かないのに僕らに遅れる事が無い。
でも何でなんだ??
ティムは道を歩くのが嫌いなんだよね。とピーター。
全くもって野生児だ。
しばらく道を歩いているとサーカスのテントが見えてきた。
するとピーターが「あの入り口まで競争だ」と言うとティムと走り出した。
その早い事。なんだろねあの兄弟。。
移動遊園地は映画の中に出てくる様な可愛らしいのもだった。
映画の中にいるようだ。
僕らはサーカス小屋に入った。
何だか可愛い椅子にみんな行儀よく並んで腰掛ける。
するとティムはナップサックからバナナを一房出して来てみんなに1本ずつ配りはじめた。
なんか強烈なイメージと違うな。。
サーカスもおとなしく楽しそうに見ている。
なぁ〜んだ。いい奴じゃ~~ん。
僕はティムが好きになった。バナナをくれる男に悪い奴はいない。
海外に行くと自分と違ったライフスタイルや人生観を持って生きている人に出会う。
日本に暮らしていたら決して分からなかった事だ。
こんな生き方もあるんだ。
要するに生きていりゃなんでも有りなんだ。
もっともっと自分らしく自由に生きていいんだ。
人との出会いが自分の中の常識を消していく。
後日談だが日本に帰って来てから一緒に旅をした仲間から電話があった。
「ティムがテレビに出てたぜ。オーストライアのエベレスト登山隊のアタック隊になってたぜ」
人生は面白い。
結局何が起こるか分からないのが人生だ。
昨日までの自分と明日の自分が別人なんて事はよくあるんだよ。
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